■11月8日「京都、松尾大社 上卯大祭」です。■
「松尾大社:まつおたいしゃ」は、平安遷都により皇城鎮護の神として崇敬され「賀茂の厳神、松尾の猛神」と並び称されました。延喜式では名神大社に列し、のちに二十二社の一社となりました。旧称は松尾神社、旧社格は官幣大社。賀茂大社と並び賀茂の厳神、松尾の猛神です。
社の背後「松尾山(223m)」には松尾社の古社地があり、山頂に近い大杉谷には磐座とされる巨石があります。5世紀の頃の渡来人「秦」が山城国一帯に居住し、松尾山の神「大山咋神:おおやまぐいのかみ」を氏神としました。大山咋神は「亦の名は山末之大主神。此の神は近淡海国の日枝の山に坐し、亦葛野の松尾に坐して、鳴鏑を用つ神ぞ」と伝わります。
秦氏は酒造の技術も伝えたことから、松尾神は酒造の神としても篤く信仰されるようになりました。天平5年(733)に、社殿背後より泉が湧き出た際「この水で酒を醸すとき福が招来し家業繁栄する」との松尾の神の御宣託があったことに由来します。境内「亀の井」の水を酒の造り水に混ぜて使うこともあるそうです。酒造家だけでなく、醤油・味噌・酢等の製造販売業者から尊崇されています。
主祭神に大山昨神・中津嶋姫命(市杵島姫命)を祀ります。本殿(重文)は「松尾造り」と呼ばれる珍しい建築様式で、天文11年(1542)に改築されたものです。宝物として等身大の木造男神坐像ニ体、木造女神坐像一体(ともに重文)は、我が国最古の神像のひとつとされています。
「上卯祭:じょううさい」は、毎年11月「上の卯の日」に執り行われる醸造の安全祈願のお祭りです。卯(う)の字は甘酒、酉(とり)の字は酒壺を意味し、古来より酒造りは卯の日に始め、酉の日に完了する慣わしがあります。
上卯祭当日は、全国の和洋酒、味噌、醤油、酢等の醸造業はもとより、卸小売の人々も参集して盛大に醸造安全を祈願し、大木札(だいもくさつ)を受け、それを持ち帰って各々の蔵に奉斎する慣わしがあります。また、神前には数々の銘酒・醤油等の御供えがされます。4月「中の酉の日」には、醸造完了を感謝する「中酉祭:ちゅうゆうさい」が執り行われます。
松尾大社
◇京都府京都市西京区嵐山宮町3
◇JR「京都駅」バス40分
◇阪急嵐山線「松尾駅」徒歩5分
◇参考ブログ:http://www.y-morimoto.com/jinja22/matsuo.html
◆◆◆◆編集後記◆◆◆◆
もともとよい水と、お酒の神様として有名な松尾大社です。上卯祭には、全国から杜氏の一族が集まるそうです。科学万能の現代でも、魂を込めることで、一層のおいしさを引き出してもらいたいものです。
11月は立冬です。京都にある神社の例祭、大祭が目立ちます。京都の紅葉がきれいな時期です。京都詣でで秋を満喫なさってください。すぐそこに冬の足音が聞こえます。
読者の皆様、時節柄お身体ご自愛専一の程
筆者敬白